私(S)の母は在宅死でした。
それまでずっと何年もの間、母・私・Iちゃんと親子三代で暮らしていました。
母が亡くなったのは2003年。
その前前年の2001年に弟が亡くなり、私たちは三人とも傷ついていました。
ねこは、家族がまとっている空気の色に敏感だと思います。
私たちの周りに漂う、暗く澱んだ空気の中、まるたんは自分だけは普通でいようと、
思ってくれていたのかも知れません。
それまで以上に、家族に寄り添ってくれました。

そして母が亡くなったとき…
魂を失くしたその身体が家から運び出されたあと、まるたんは母の部屋を歩き回り、
いつもと違う声で、大きな声で鳴きつづけました。
もう二度と会えないって、解るのかな…・?
言葉が通じないのに、どうして解るのかな…?
「言葉が通じない」と思っていたのは、人間の方だけなのかも知れません。
まるたんはちゃんとわかっている。
みんなの悲しみも、辛さも、きっとちゃんとわかっていたんだね……。
母と私とIちゃん。三人で支えあって、もたれ合ってできた三角錐のような家族でした。
その一本の柱が消えて、まるたんの小さな身体が補強に使われました。
随分、まるたんに依存していた二年間でした。
重かったよね、ヒトが2人も寄りかかって、まるたんに頼りっきりで。
それから死んでしまうまでの二年間、まるたんはずっと、ヒト二人に愛情を注いでくれました。
初めて行った病院でした。
国道沿いにあり、建物はガラス張りで、トリミングされている犬の様子が道路からも見えて、
入口の横には芝生のドッグラン(三畳ほどですが)もある、わりと規模の大きな病院でした。
バスの中で広告アナウンスを聞いていたので、「近くの病院を探そう」と思ったときに、
一番はじめに浮かんだのがそこでした。
一回の受診のみで治ればいいけれど、通うことになるなら、やはり歩いていかれる距離に
あるところでないと無理なので、「とにかく近くてある程度の知名度がある…」を基準に
病院を探しました。
「知名度がある」=「いいお医者様」だと勘違いしていたのです。
そこそこ知られているところなら、評判が悪くはないなら、きっとまるたんを治してくれる……
そう勝手に思い込んでいたのです。
そして、その病院に連れて行こうと準備をしたのに、
まるたんはキャリーに入るのを猛烈にいやがりました。
ペットホテルに預かってもらうときなども、いつも嫌がっていましたが
この時は、本当にものすごく抵抗するので、まるたんは連れて行かずに、
Iちゃんが一人で行って症状を説明し、お薬だけもらう、という方法を選びました。
『食欲不振』『下痢』
この二つが、まるたんの症状でした。
それで出されたお薬は『下痢止め』でした。
とにかく下痢が治まれば、少しは食べられるようになるかな。
そう思って、錠剤を飲んでもらいましたが、まるたんの具合はよくなりません。
「やっぱり診てもらうしかないね、ちゃんと検査してもらった方がいいよ」
Iちゃんと話し合い、なんとかキャリーに入ってくれたまるたんを連れて、
その病院に向かいました。
診察台に降ろすと、まるたんは意外におとなしく、医師にあちこち触られたり
お腹を押されたりしても、まったく抵抗もせずに診察を受けてくれました。
食欲不振と下痢が続いている・・と症状を伝えると、その院長先生は
「はいっ、これ読んで」
と、自信満々で地域の情報フリーペーパーを私たちに手渡しました。
そのカラー印刷された紙の中央に、病院の広告と共に院長自身が書いた
コラムが掲載されていました。
【猫の肝臓リピドーシス】
猫の体重は3~4㌔が普通です。ところが最近はグルメの影響や運動不足のせいで5~6㌔の猫も珍しくありません。当院での最高は10㌔です。肥満の猫が何らかの原因で1週間くらい全く食欲が無くなると、肝臓に脂肪が蓄積する肝リピドーシスという病気になることがあり、治療しないと死に至ることになります。症状としては食欲不振、体重減少、黄疸および嘔吐があげられます。治療は栄養補給をし続けることに尽き、獣医師は栄養チューブを駆使して様々な方法で栄養液を投与します。
肥満の猫が食欲不振になっても体脂肪が消費されて丁度いいと思いがちですが、実はこのような病気が待ち受けていますので注意してください。
「これだね、食事を摂らないとこれになるから、強制給餌します」
と言って、他の医師と看護師に命じて、柔らかいウエットフードの用意をさせました。
無理やり口をこじ開けられ、上あごにペースト状のフードを塗りつけられるまるたん。
いやがって舌で押し出してしまうので、今度は鼻からチューブを入れられ、
流動食を流し込まれます。
嫌がって暴れるまるたん。もう少し上手に、優しくできないものなんでしょうか?
と思いながらみていたら、まるたんは治療台の上でおしっこをしてしまいました。
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家族としての責任よりも、獣医さんにすがれば治してもらえる!みたいな。
本当は、いちばん冷静にならなければいけない、大事なときだったのに……。
そうですよね、初めからいい病院・獣医さんに出会えれば、悲しい思いをする人がもっと少なくなると思います。
いつもコメントをくれてありがとうございます
しゅりっちさんのコメントを読むと、元気が出てきます。
シュリくんは、いつもしゅりっちさんのそばにいてくれていいですね
すごくうらやましいです。銀蔵・カヲルともに自分が来たいときだけヒトの近くに来ます。
抱っこも、されたい時だけ。ヒトの意思なんてどうでもいいぜ!みたいな感じです。
でも2人ともすっごく可愛くて大好きです。